施政方針(令和6年度)

更新日:2024年03月01日

施政方針(令和6年3月) 市議会定例会

本日ここに、令和6年度一般会計予算をはじめ関係諸案件を市議会にご提案申し上げ、ご審議いただくに当たりまして、令和6年度の施政の方向と主要施策の概要を申し上げ、議員各位、並びに、市民の皆さま方のご理解、ご協力を賜りたいと存じます。

初めに、令和6年度市政運営における基本的な考え方について申し上げます。

昨年5月に、新型コロナウイルス感染症の法的位置付けが2類から5類へと引き下げられました。長く苦しめられてきたウイルスとの闘いに、ようやく明るい兆しが訪れたと大いに期待を膨らませたものの、長引くロシアによるウクライナ侵攻や中東地域での武力衝突等、世界情勢の悪化による激しい物価の高騰が、私たちの暮らしに暗い影を落としています。
市政におきましても、こうした事態を受けて行政運営経費が軒並み上昇するなど、財政運営は大変厳しい状況となっており、令和6年度は将来に向けて持続可能な大和高田市の実現に向けて、既存の施策や事業の執行に固執するのではなく、情勢に応じた発展的見直しをも視野にいれながら、その取捨選択に取り組む年度としていかなければならないと考えております。

そのような中にあって、まず、公共施設等の再編・整備に取り組むべく、令和5年度から全庁横断的な体制の下、公共施設等の総合的かつ計画的なマネジメントを推進するために、「大和高田市施設マネジメント検討委員会」を設置いたしております。本市の実情に応じた施設保有量の実現や将来ニーズに対応した施設再編整備の方向性を示すため、施設の最適化、管理運営の効率化に向けた議論を重ねてまいります。

市立病院の建て替えにつきましては、これまでの経緯に加えて、情勢の変化や市民の皆様からのご意見を踏まえた更に精度の高い新たな検証が必要であると判断し、検証業務に必要な補正予算を賜り、令和6年9月議会においてその検証報告をさせていただくことを目標に、現在業務に着手しているところであります。
市立病院の耐震化問題を早急に解決するためにも、候補地の決定は喫緊の課題であると認識し、その判断材料となるこの業務につきましては、様々な角度から検証を行い、市民の皆さまにもご理解いただけるものにしたいと考えております。
なお、総合体育館等、他の施設の整備に係る取組につきましては、「大和高田市まちづくりの指針」の基本目標に基づき、それぞれの項目においてご説明申し上げます。

将来に向けて持続可能な大和高田市の構築に向けては、本市の発展や活性化に資する考えを、未来を見据えてしっかり整理しておくことも重要となります。
現在本市では、奈良県と連携して進めております「まちづくりに関する包括協定」に基づき、令和5年4月に「シビックコア周辺地区」の基本計画を更新し、(仮称)「まちの駅」の整備に向けた社会実験を実施いたしております。住み続けたくなるまちづくりを目指し、引き続き令和6年度も社会実験を継続実施し、広場整備事業の具体化に取り組んでまいります。

それでは、令和6年度の主な施策について、「大和高田市まちづくりの指針」の6つの基本目標に基づき、順にご説明申し上げます。

一つ目の目標は「認め合い、高め合う人が輝くまちづくり」であります。

まず、人権を尊重する社会の実現及び平和を願う市民意識の醸成についてであります。

人権施策につきましては、あらゆる差別を許さぬ強い姿勢の下、一人ひとりが人権を尊重する意識を持ち、人権が守られ、大事にされるまちづくりのため、あらゆる機会を捉え市民啓発をいたします。
令和5年6月に、国が制定した人権三法を明文化し、あらゆる差別の解消を推進することにより、誰もが自分らしく生きることができる共生社会を実現するため、「大和高田市人権擁護に関する条例」を「大和高田市障害者差別、ヘイトスピーチ、部落差別等あらゆる差別の解消の推進に関する条例」へと改正しました。差別のない共生社会を目指すとともに、一人ひとりが人権を尊重する意識を持ち、自他の人権が大事にされるまちづくりのため、あらゆる機会を捉え、各種研修や市民集会等の開催等、啓発活動を積極的に推進してまいります。

平和を願う市民意識の醸成につきましては、「非核・平和都市宣言」自治体として、今後も変わることなく平和行政の推進に取り組んでまいります。

男女共同参画につきましては、性別にかかわらず、誰もが互いに人権を尊重し、責任も喜びも分かち合い、その個性と能力を十分に発揮できる男女共同参画社会の実現に向け、更なる推進に努めてまいります。

次に、生涯学習機会の充実・文化活動の推進・スポーツ環境の整備についてであります。

生涯学習につきましては、中央公民館や葛城コミュニティセンター等における定期講座や教室等の充実、自主サークル活動の活性化を図り、生涯学習ネットワークの形成と拡充に努め、市民の皆さまに、生きがいと潤いのある人生を過ごしていただけるよう努めてまいります。

図書館におきましては、電子図書館サービスにおけるコンテンツの更なる充実を図ることで、利便性の向上に努めていきたいと考えております。加えて、様々なジャンルの教室やイベントの開催、小学校や幼稚園、保育所への図書の配本、「図書館を使った調べる学習コンクール」の開催等、子どもの読書活動への支援に努め、「知の拠点」「情報発信拠点」として、魅力ある図書館づくりを進めてまいります。

また、本市に所在する文化資源や歴史文化につきましては、地域共有の財産として、大切に後世へ継承していくとともに、文化財ボランティアガイドと連携を図りながら、文化資源や歴史文化を活用した地域活性化や地域の特性を生かしたまちづくりを目指してまいります。

市民文化の振興といたしましては、文化活動を通して生きる喜びや笑顔につながる事業に取り組んでまいります。
さざんかホールでは、音楽や演劇等の鑑賞事業、市民自らが芸術活動を実践する機会となる事業、並びに子どもたちが本物の芸術に触れ合える「ワークショップ事業」や「アウトリーチ事業」を進めてまいります。

スポーツ振興につきましては、市民が健康でいきいきと暮らせるよう、生涯スポーツの啓発、環境の整備に取り組んでまいります。市民スポーツの拠点として幅広く利用されている「総合体育館」の整備につきましては、物価高騰等の影響を受け、既存の進め方を大幅に見直していかなければならない状況となっております。本市のスポーツ振興にとりましては、総合公園への移転新築が最も理想的であるとの思いに変わりはございませんが、これを一旦凍結することを念頭に置き、令和6年度に行います現施設の耐震診断の後、改めて今後の方向性を判断してまいりたいと考えます。

次に、国際交流の推進及び国際化社会への対応についてであります。

姉妹都市オーストラリア・リズモー市との交流につきましては、昨年8月7日に姉妹都市提携60周年を迎えました。現在、当該交流の節目を祝う周年記念事業は5年ごとに実施することとなっており、本市で行う60周年記念事業については、桜の開花時期に行いたいとのリズモー市側の意向を受け、本年4月に同市の市民訪問団をお迎えする予定となっております。
これを機に、姉妹都市間における信頼関係を一層深めてまいりますとともに、更なる交流の活性化に取り組んでまいりたいと考えます。
また、今後の本市の国際交流事業をより円滑に進めていくために、外国青年招致事業であるJETプログラムを活用した国際交流員の配置を進めてまいります。

二つ目の目標は「子どもたちの笑顔あふれるまちづくり」であります。

まず、教育環境の充実についてであります。

学校教育につきましては、未来を担う子どもたちが健やかに成長していくことができるよう、確かな学力の育成、豊かな人間性の育成、たくましい心身の育成等を目標に、ICTの効果的な活用、協働的な学び、体験的な教育活動、健康教育及び安全教育の充実に取り組む環境の整備を推進します。
特に、時代に即した教育の推進に向けては、情報化社会、またグローバル社会に対応できる人材育成を目指したICT教育、外国語教育等の充実に努めてまいります。
その中でまず、ICT教育につきましては、タブレット端末等をはじめとするICT機器を有効活用した授業を行うことにより、児童・生徒の興味、関心、情報活用能力を高め、子どもたちの学力向上につながる授業の創造に引き続き努めてまいります。
そのために、教員に対しましては、技術的なサポートだけでなく、他の成功事例や専門的な情報を交換する機会を設ける等、スキルの向上につながる研修の強化に取り組んでまいります。
なお、ICT機器の活用に関しましては、奈良県が導入を予定しているGIGAスクール運営支援センターの活用を推進することで、トラブル時をはじめとするサポート体制の充実を図ってまいります。今後は、奈良県独自の教育データの利活用の推進に伴い、本市においてもICT機器の利活用が、より学校現場に浸透するよう取り組んでまいります。

外国語教育につきましては、市立全ての幼稚園・こども園をはじめ、小中学校及び高田商業高等学校に英語を母国語とする外国語指導助手を派遣しております。引き続き令和6年度も、生きた外国語に触れる機会の充実を図り、外国への興味を深め、コミュニケーション能力の向上を図ってまいります。

学校生活において、円滑なコミュニケーションがとれるよう指導を行う通級指導教室(ステップ教室)につきましては、高田小学校・浮孔西小学校に加え、令和6年度以降、新たに増設することにより、児童生徒の支援をより一層充実してまいります。
また、市立学校等の特別支援教育につきましては、支援を要する児童生徒の自立や社会参画に向け、一人ひとりの教育的ニーズを把握し、行政と教育が連携し、引き続き一体となった途切れのない支援を行ってまいります。

また、令和6年度も、スクールサポートスタッフや学習指導員を小学校・中学校に配置することといたします。これにより、教員の働き方改革の推進はもとより、児童・生徒一人ひとりに合ったきめ細かな対応が可能となり、子どもたちの学力向上につながるものと考えております。

中学校における学校部活動につきましては、令和5年度に部活動地域移行検討委員会を設置し、合同部活動、拠点校部活動の実施を推進していくことの議論を行いました。今後は、令和8年度からの地域連携・地域移行に向け、引き続き外部委員を含む検討委員会の中で、議論を進めてまいります。

将来の小中学校の規模・配置の適正化につきましては、基本方針の策定に向け、令和6年度から外部委員を含む検討委員会を設置して、将来の児童生徒数、学級数等を視野に入れた検討を進めることにより、関係者と合意形成を図りながら、より良い教育環境のあり方を検討してまいります。

また、学校運営や学校の課題に対して保護者や地域住民等の皆様が参画できる仕組みとして、コミュニティ・スクール制度を本格的に導入いたします。学校を取り巻く問題の複雑化・困難化に対応するため、地域と学校が連携・協働して学校運営の向上を目指してまいります。

幼稚園につきましては、子どもの成長を切れ目なく支える観点から、学びや生活の基盤を作る幼児教育と小学校教育の接続について、令和5年度において校区の教職員が協働して、幼稚園教育要領で示された「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を共有するなどの連携を図り、「架け橋期カリキュラム」を作成しました。引き続き、保護者や地域住民の方々の参画も得ながら幼児教育の一層の充実を図るとともに、奈良県の令和6年度幼児教育の理解・発展推進事業において公開保育を実施いたします。

学校施設の整備につきましては、子どもたちが日々学び生活をする場所であることを肝に銘じ、安全で安心な教育環境の維持管理に努めるとともに、設備等の改善にも取り組んでまいります。

高田商業高等学校では、生徒の個性を伸ばすとともに、社会に通用する人材の育成や確かな学力の向上を目標とした「ビジネスマナーの習得」「上級資格の取得」「部活動の充実」を基本方針とし、引き続き、これからの時代に対応できる人材育成に取り組んでまいります。
また、生徒に自ら学び、考え、判断して行動できる力を身に付けさせるとともに、ICTを活用した教育を充実させていくことにより、オンライン英会話等で「話す」「聴く」力を育てる英語教育の充実等、グローバル化やICT化が進む社会で求められる人材育成を目指してまいります。
今後におきましても、進学や就職にも対応できる教育カリキュラムの充実に努め、進路選択において良好な成果を上げ、特色ある学校づくりを進めてまいります。

不登校の児童生徒への支援につきましては、引き続き「かたらい教室」での支援を充実させ、誰一人取り残されない学びの保障を目指してまいります。併せて、若者の居場所「ヒサかた」では、中学卒業後の支援を図ってまいります。
いじめ問題につきましては、「大和高田市いじめ防止基本方針」を基に、組織的な対応等を推進し、子どもたちが安心して学校生活を送ることができるように、「いじめを許さない、見逃さない」学校づくりに努めてまいります。

次に、子育て支援体制の充実についてであります。

現在、国においては、子どもの最善の利益を第一に考えた「こどもまんなか社会」の実現に向けた様々な子育て支援施策への取組が急ピッチで進められており、本市も同様に、未来を担う子どもたちを安心して生み育てることができるまちづくりを目指し、更なる子育て支援を推進していくことが重要と捉えております。

支援を必要とされる妊婦や子育て家庭の方々に寄り添い、現在の多様化する子育て課題を解決できるように、児童福祉と母子保健分野の垣根を超えた連携を強化し、妊娠期から子育て期までの切れ目のない一体的な相談支援が行えるよう「こども家庭センター」機能の構築に取り組んでまいります。
一方、地域の児童や子育て中の親子の活動拠点として50年に渡り利用されてきた大和高田市立児童館については、施設の老朽化の進行等の理由により、令和6年9月末の閉館を考えております。閉館により市内の地域子育て支援拠点が一つ減少することとなりますが、既存施設等を最大限に活用し、市民サービスが低下しないよう子育て支援サービスの充実を図ってまいります。

放課後児童ホームにつきましては、令和6年度より、お盆休みの休所期間を廃止し、子どもたちが健やかな成長が図れるようサービスの向上に努めてまいります。
保育所・こども園における教育・保育事業につきましては、発達支援事業、一時預かり事業、家庭支援推進事業、延長保育事業、市民交流センターにおける託児事業等の実施を通し、引き続き保育事業の充実に取り組んでまいります。
保育の質の向上に当たりましては、障害児保育や人権保育等の研修を行い、保育士の資質を高めてまいります。また、保育環境に関しましては、令和6年度より、新たな民間小規模保育所1施設の増設を図り、保護者が安心して子育てできる環境の推進に取り組んでまいります。また、保育士の人材確保と定着の促進を図るため、民間保育施設の処遇改善事業も行ってまいります。

三つ目の目標は「健康でいきいきと暮らせるまちづくり」であります。

まず、医療体制の整備についてであります。

市立病院は、令和5年10月をもちまして、開院70周年を迎えました。当院は、基本理念であります、中和地域の中核病院として地域医療に貢献することを謳っておりますが、長年の医師不足、特に内科医師不足のため、これまで十分にその役割を果たせない状態が続いておりました。しかし、令和4年度からは、奈良県立医科大学のご支援により、特に内科医師の増員をいただくことができ、診療体制が強化されました。その一つの成果として令和5年4月より心臓カテーテル検査・治療を開始し、より専門的な治療を行うことができるようになったことで、手術件数も増加いたしております。
こうしたことから、当院は奈良県がん診療連携支援病院として更に充実した診療を目指していきたいと考えており、令和6年度は外科及び泌尿器科領域でより専門的ながん治療を目指すため、令和5年12月議会において議決を賜りました手術支援ロボットの導入を予定しております。
次に、子育てに関する領域につきましては、少子高齢化により分娩件数が減少し、中和医療圏域では産婦人科を標榜する医療機関が減少している状況にありますが、当院は公立病院として、これからも小児医療及び周産期医療に係る役割をしっかりと担ってまいります。なお、その一環として、令和5年4月より、保健センターの事業である、育児に困った方や悩みを持った母子をサポートさせていただく産後ケア事業に協力する体制を開始しております。
加えて、令和4年2月に実施した市民アンケート調査において、市民の皆さまより最も期待する医療サービスとして挙げられた「24時間対応の救急医療」に引き続き対応するべく更なる医師の増員に努め、令和6年度は、救急患者の受け入れ件数について令和5年度目標を上回る2,800件を達成し、将来目標である年間3,000件の達成に向けて取り組んでまいります。
これからも地域の安心・安全の医療に貢献する病院として、医師の確保や医療体制の整備に向けて奈良県立医科大学との連携強化を図ってまいります。

次に、休日の医療体制につきましては、引き続き香芝市、葛城市、広陵町の2市1町と連携し、安心して受診していただけるよう救急・急病に対する診療体制の充実に取り組んでまいります。

次に、健康づくり事業の推進についてであります。

令和4年度より健康寿命の延伸を目指して実施しておりますチャレンジ健康事業につきましては、「やまとたかだ健康マルシェ」の開催に加え、次の各健康づくり関連事業に取り組んでまいります。

まず、予防接種事業につきましては、新型コロナワクチン接種が令和6年度より高齢者インフルエンザと同様の定期接種となります。今後も市民の皆さまが、安全かつ安心して接種を受けられるよう、医師会や各医療機関と連携を深めながら接種体制の確保に努めてまいります。

母子保健につきましては、産後の不安を軽減し、乳児の健やかな成長を支援するため、産後ケア事業の拡充及び新たに産婦健診への費用助成を行ってまいります。

また、子どもの医療費助成につきましては、現在、未就学児に行っている現物給付方式を、本年8月診療分から高校生世代まで拡大し、子育て世代の経済的負担の軽減と利便性の向上を図ってまいります。

成人保健につきましては、がんの早期発見・早期治療に向けて、各種がん検診の実施に努めながら、「がんの予防」だけでなく、「がんとの共生」において、新たに、アピアランスケア助成事業に取り組んでまいります。

更に、歯と口の健康づくりにつきましては、歯科医師会のご協力の下、働く世代や妊婦の方が、受診しやすい歯科健診(検診)の体制整備を行い、受診勧奨に努めてまいります。

国民健康保険事業につきましては、都道府県が財政運営の責任主体となり7年目に入ります。奈良県では、令和6年度から、奈良県国民健康保険運営方針に基づく保険税水準の統一が実施され、本市におきましても税率の改定を行い、持続可能な安定した制度運営に努めてまいります。
また、健康の保持増進に資する事業の効果的・効率的な実施を図るために策定した「第3期データヘルス計画」に基づき、健康意識の向上や各種検診助成事業の普及啓発に努め、生活習慣病の発症及び重症化の予防に取り組んでまいります。

介護保険事業につきましては、団塊の世代が75歳となる2025年が目前に迫り、ますます高齢化社会が進む中、「大和高田市第9期介護保険事業計画」に基づき、介護保険の趣旨を踏まえ、適切で健全な制度運営に努めるとともに、より良いサービスが提供できる介護環境の整備に取り組んでまいります。

地域支援事業につきましては、高齢者が住み慣れた地域で人生の最期まで自分らしい暮らしができるよう、医療と介護の関係者の連携を強化し、多職種協働による切れ目のない支援を推進してまいります。
また、認知症になっても安心して暮らせる地域づくりを目指し、認知症の早期発見、相談窓口の周知啓発、認知症の方や介護者が交流できる場の提供等、孤立を防ぐ体制づくりを行ってまいります。
更に、早い段階から介護予防に着手できるよう介護予防事業を展開し、運動機能や口腔機能の向上、栄養改善、地域活動への参加促進などを通じて、健康寿命の延伸を目指してまいります。

なお、後期高齢者医療保険制度におきましても、健診・医療・介護の各種データを活用し、個別的支援を行うハイリスクアプローチや地域でのフレイル予防などの健康啓発等を実施するポピュレーションアプローチ等、保健事業と介護予防の一体的な実施に取り組んでまいります。

次に、地域福祉の推進についてであります。

地域福祉の推進につきましては、引き続き令和6年度も「大和高田市地域福祉計画」に基づき、「地域共生社会」の実現に向けて取り組みますとともに、令和8年度からの「第2期大和高田市地域福祉計画」策定に向けた準備を進めてまいります。
8050問題や引きこもり支援等、分野をまたぐ複合的な福祉課題に対しては、庁内外の連携体制をより強化するとともに、社会福祉協議会とも協働して、包括的な支援体制の整備を図ってまいります。

また、地域コミュニティづくりに係る試験的事業として、主に75歳以上の高齢者を対象に、市内の公衆浴場を活用した高齢者入浴補助事業を行います。

障害福祉につきましては、社会福祉協議会に新たに設置した相談窓口を中核におきながら、障害種別や年齢にとらわれない総合的・専門的な相談支援体制を整備するとともに、将来的には更なる機能強化を目的に、基幹相談支援センターの設置に向けても準備を進めてまいります。

生活保護制度の支援につきましては、生活する上での最終的なセーフティネットであることから、引き続き関係機関と連携を図りながら、複数の課題を抱える個々の被保護者のケースに応じて、より適切な自立助長に向けた支援に取り組むとともに適正な保護行政に取り組んでまいります。
生活困窮者自立支援法に基づく生活困窮者の自立支援につきましても、制度の狭間にある様々な課題に対し、一人ひとりに寄り添った支援に努め、住まいや就労、経済面について自立に向けた支援を行ってまいります。
また、両制度の切れ目のない連続的な支援に努めてまいります。

四つ目の目標は「活気あふれるにぎわいのまちづくり」であります。

まず、地域産業の振興についてであります。

商工業におきましては、地域産業全体で稼ぐ力を高めていくため、事業承継支援、雇用促進及び経営支援を推進してまいります。経営者の高齢化が進み、後継者不在による廃業増加が見込まれる中、長く育まれてきた貴重な技術や仕事を次の世代に残すことを目指し、関係機関と連携を図りながら、事業承継に取り組む事業者を積極的に後押ししてまいります。また、若者の地元定着を目指し、地元企業で働く魅力を市内外に発信してまいります。そして、事業の継続や拡大、創業の支援につきましては、融資制度などの金融支援及び広陵高田ビジネスサポートセンターによる伴走型支援を継続してまいります。併せて、市内事業者や商店街と連携を図りながら、市内産業の振興及び商店街の活性化につながるイベント等を実施してまいります。

次に農業につきましては、後継者不足や耕作放棄地の増加などの問題に備え、農業委員会と連携を図ってまいります。また令和6年度は地域での話し合いによる意向を踏まえ、地域農業の将来の在り方を検討した「地域計画」の策定に取り組んでまいります。
農業用施設につきましては、近年、多発する豪雨災害や地震に備えるため、農業用ため池の適正な管理と防災・減災の取組等の推進に努めてまいります。
今後も農業が持続可能な成長を続け、意欲のある農業者が活気あふれる農業に携われるよう、農業者・農業関係機関等と協議しながら、支援してまいります。

「チャレンジ商業」につきましては、現在片塩商店街内に「大和高田市チャレンジショップ」を設置し、市内で創業を目指す方に一定期間事業を営むための店舗として安い賃料で提供しており、昨年8月よりその第一号事業者が出店されています。今後も、創業者の育成と商店街の活性化を目指し、継続してまいります。
次に「チャレンジ賑わい」につきましては、これまでの事業成果の検証を踏まえながら、引き続きまちの賑わいにつながる効果的な活性化事業の創出に取り組んでまいります。
「チャレンジ農業」につきましては、現在「きくな」「こまつな」「しろな」「ほうれんそう」「ねぎ」の本市特産野菜5品目に続く新たな候補として、収益性の高い「トウモロコシ」の栽培技術の研究を重ね、その作付けに取り組んでおります。令和6年度も引き続き作付け農家の皆さまを支援し、地域農業の発展につなげてまいりたいと考えております。

次に魅力発信の強化につきましては、観光事業を通じて広域的な協議会への参加や他の関連団体等との連携を図りながら、インスタグラム等のSNSを活用した観光資源の情報発信や旅行会社、インフルエンサーを招致したファムツアー事業等に取り組んでまいります。

五つ目の目標は「安心して暮らせる快適のまちづくり」であります。

まず、持続可能なまちづくりの推進についてであります。

人口減少等の社会情勢の変化を踏まえ、自動車交通等の円滑な処理の観点やまちづくりの観点から、都市計画道路の検証を行ってまいります。
市内の交通ネットワークにつきましては、物価高騰の影響などによりコミュニティバス「きぼう号」の運行経費も年々増加しております。コロナ禍が明け、利用状況も回復してきておりますが、特に利用率が低い路線を中心に運行内容の見直しや代替サービスの検討を含め進めてまいります。

次に、都市基盤の整備についてであります。

市内の道路ネットワーク形成に必要な都市計画道路の整備といたしまして、「大和高田当麻線」の事業を推進し、交通の利便性及び安全性の向上を図ってまいります。

道路インフラの維持につきましては、道路及び橋りょうの修繕計画に基づき、順次補修工事を進めてまいります。

上水道事業につきましては、常に市民の重要なライフラインとしての役割を果たし、安心安全な水道水を安定して供給するため、老朽管更新事業を計画的に実施してまいります。併せて、災害時においても安定した給水を確保できるよう、更なる耐震性の向上を目指します。
そのためには、健全な財政状況を維持していくことが極めて重要であると考えますので、事業の推進に当たりましては経営の効率化を徹底し、引き続き経営強化に向けて努力してまいります。
また、令和6年11月に予定されております奈良県広域水道企業団の設立、令和7年4月の水道事業統合を見据え、県域水道一体化への参加に向けた協議、検討を行い、水道事業の将来にわたる安全性、強靭性、持続性の確保を目指してまいります。

下水道事業につきましては、その整備の推進重点計画に基づき、事業認可区域内の未だに普及していない区域の早期解消を目指し、低コスト技術の採用・導入等により、迅速に事業の推進を図ってまいります。令和5年度末見込みで64.8%である整備率を、令和6年度は66%に引き上げることを目標に、快適な生活環境づくりの充実に取り組みます。

次に、生活環境の整備と充実についてであります。

ごみ処理対策事業としましては、適正な廃棄物の収集・処理はもちろんのこと、更なるごみの減量や先を見据えた循環型社会の構築に取り組んでまいります。ごみ処理広域化事業では、山辺・県北西部広域環境衛生組合による新ごみ処理施設の完成予定に合わせて、本市クリーンセンターのごみ中継施設の建設工事も、令和6年11月の竣工を目指してまいります。また、リサイクル施設の整備につきましては、引き続き最適な事業手法の検討を進めてまいります。

空き家対策事業につきましては、管理が不十分な状態の空き家を減らし、利活用を促す対策として、相談体制の整備を行い、所有者等に対し適正管理の責務についての周知に努め、空き家等の改善に取り組んでまいります。また、危険な空き家の除却に係る補助制度を令和6年度より創設し、活用いただくことで、危険な空き家の除却に努めてまいります。

公営住宅につきましては、家賃徴収に努め、滞納を減らすべく督促、催告を適正に行ってまいります。債権の徴収につきましては、弁護士事務所に委託し、回収率の向上に努めてまいります。また、公営住宅の維持管理に努めるとともに、「公営住宅等長寿命化計画」を見直し、今後の公営住宅の施策を展開してまいります。

地域住民の生活環境悪化等を減少させるため、市内自治会にも広まりつつある地域猫活動の一助として、野良猫避妊・去勢手術を獣医師に委託する業務を令和6年度も継続して実施し、安心して暮らせる環境づくりに努めてまいります。

また、地球温暖化対策につきましては、令和5年度に大和高田市地球温暖化対策実行計画を策定したことにより、本市施設における日常の事務及び活動により排出される温室効果ガスの現状を整理いたしました。国の目標である「2050年までに、二酸化炭素排出量実質ゼロ」の実現に向けて、本市の実行計画で策定した排出量抑制対策を基に、地球温暖化対策の推進に努めてまいります。

大和高田市総合公園につきましては、未整備区域の整備を行うに当たり、用地取得等を進めてまいります。
また、他の都市公園施設につきましても、適切な維持管理及び更新業務に努めてまいります。

次に、安全で災害に強いまちづくりの推進についてであります。

近年、高齢者の自動車運転中の交通事故が多発していることから、運転免許証を自主的に返納された65歳以上の高齢者の方々に「ICOCAカード」を配布する事業を継続いたします。
公共交通機関の利用を促進することにより、事故発生件数を抑制し、より安心で安全な社会の確立を目指して検討を続けてまいります。
また、高齢者を狙った特殊詐欺が大きな社会問題となっていることから、同じく令和4年度より開始している、防犯機能を備えた電話機器の購入について、65歳以上の高齢者を含む世帯に対して、費用の一部を補助する事業につきましても継続いたします。
更に、生活道路における住民や通学する児童・生徒の安心・安全を確保するため、車輛の速度を抑制させるための路面の改良対策事業を行います。
このほか、子どもや高齢者に対する各種安全教育活動や、公共の場所における放置自転車対策を継続して実施するとともに、防犯灯のLED化事業につきましても、引き続き一定の補助金を交付してまいります。

元日に令和6年能登半島地震がありましたが、本市においてもいつ同様の災害が発生してもおかしくありません。近い将来、発生が予測される南海トラフ巨大地震や、気候変動の影響により頻発化・激甚化する豪雨災害など、大規模な自然災害に対応できるよう、公助・共助・自助それぞれの防災力強化に努めてまいります。
自主防災組織等で実施する防災訓練に、消防署と連携を取り、消防団を訓練支援のため派遣します。地域コミュニティの充実・強化を進めつつ、出前講座の実施や自主防災組織の設立支援を通じて、地域の防災力の向上を図ってまいります。
また、JアラートをSNSに連携させる等、情報発信手段の多重化を図ることで、正確な情報をより確実に伝達し、市民の皆さまの安全確保に努めてまいります。
実践的な防災訓練の推進については、地域防災力の向上と適切な避難行動を促すため、過去の災害事例を踏まえた避難所開設・運営訓練に取り組んでまいります。

内水対策事業につきましては、現在、奈良県と連携して、奈良県高田土木事務所敷地内において雨水貯留施設の整備を進めているところでございます。

六つ目の目標は「自立と協働のまちづくり」であります。

まず、財政基盤の確立についてでありますが、冒頭においても述べさせていただきましたように、物価高騰により様々な行政運営経費が増大している中、安定した行財政運営を進めるためには健全な財政基盤の確立が不可欠であります。そのためにはこれまで以上に、限られた行政資源をより有効に活用していく努力を行う必要があります。
そこで、「大和高田市まちづくりの指針」を基に、当該指針に掲げる将来都市像を実現するために取り組んでいる事業がどの程度貢献出来ているのかを評価し、貢献度合いの高い事業には重点的に取り組み、貢献度合いの低い事業は、実施方法を変更する等の改善を図る行政評価制度の定着に努めることで、必要性の低い事業のコストカットだけではなく、真に必要な事業には積極的に投資をしていくといった行政資源の集中化、効率化に努めてまいります。

歳入確保の取組といたしましては、市税等の納付に関し、地方税ポータルシステムを利用したクレジットカードや全国の地方税統一QRコード対応金融機関での納付を可能とする等、従前より納税者の皆様の利便性の拡大と収納率の向上に努めているところでございますが、令和6年度も更なる徴収率の向上に向けて取り組んでまいります。
ふるさと大和高田応援寄附金につきましては、令和4年度には全国の皆さまより2億1,000万円のご寄附を頂戴しております。自治体間での競争が激化しておりますが、貴重な財源確保手段の一つであり、また、本市産品のPRに向けた絶好の機会でもありますので、引き続き、返礼品の充実と返礼品協力事業者の拡大に努め、寄附先として選んでいただけるよう取り組んでまいります。

次に、効率的な行政運営の推進についてであります。

効率的な行政運営の推進に当たっては、職員一人ひとりが大和高田市職員としての誇りと強い情熱を持って職務に取り組んでいくことが大切であります。私は、職員が勇気を持って一歩前へと踏み出せるよう、そのエネルギー供給源となるべく組織の先頭を走ってまいる所存であります。
行政に対するニーズは年々複雑化し、高度化しています。併せてこれらに対応していくための多様な研修実施を通じて、高い職務遂行能力を持つ人材の育成に取り組んでまいります。

マイナンバーカードにつきましては、健康保険証と一体化し、令和6年12月よりマイナ保険証を基本とする仕組みに移行されることから、より一層の普及促進が必要となってまいります。
令和6年度のマイナンバーカード普及促進の取組といたしましては、毎月実施しております申請や交付のための市庁舎における休日窓口業務を引き続き行うことに加え、新たに、施設入所者等への出張申請受付を行ってまいります。
このほか、マイナンバーカードにおける氏名の振り仮名等表記の実現を図るため、戸籍システムや住民基本台帳システムの改修を行いたいと考えております。マイナンバーカード取得環境の整備及び利便性の向上に向け、積極的に取り組んでまいります。

デジタル・トランスフォーメーションの取組につきましては、令和5年度より自治体情報システムの標準化に着手し、現在令和7年度末の稼働に向けて取組を進めております。令和6年度におきましては、更なる市民サービスの向上と職員の業務効率改善を目指し、窓口支援システム、いわゆる「書かない窓口」の早期導入に向けた検討を行ってまいります。

広報につきましては、昨今頻発する災害等の状況も踏まえながら、市民の皆さまがより一層情報を取得しやすい環境の構築に向け、ホームページやSNS等を活用して情報発信手段の多様化に取り組んでまいります。

最後に、市民参画による協働のまちづくりの推進についてであります。

市民交流センターが開館して8年、途中新型コロナウイルス感染症の拡大があり、市民活動を自粛するなどの期間もありましたが、コロナ禍が明け、活動も徐々に活発になってきております。市民交流センターを中心に市民活動団体や学生、各種団体など多様な組織と協働し、まちづくりを進められるよう、様々な取組を提案してまいります。
一方、消費生活問題につきましては、新型コロナウイルス感染症の法的位置付けが5類へと緩和されて以降、消費活動が活発化したことの影響によりトラブル事案が増加しております。消費者庁や国民生活センターが示す事例を広報誌や市ホームページに掲載する等啓発に努めながら、市民の皆さまの被害を未然に防げるよう取組を続けてまいります。

以上、令和6年度の主な施策の概要について述べさせていただきました。

目まぐるしく変化する社会情勢に的確に対応しながら、将来にわたって持続可能な大和高田市を、そしてその上に「笑顔の花咲くまち」を実現することができるよう精一杯取り組んでまいる所存であります。

最後に、市民の皆さま、議員各位からも広くご意見・ご提言をいただき、更なるご理解とご協力を賜りますよう心からお願い申し上げ、令和6年度の施政方針といたします。

大和高田市長 堀内 大造

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電話番号:0745-22-1101

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